PSYCHO-PASS サイコパス 2
第11話「WHAT COLOR?」
感想
ちょっと忙しなかったけど、各キャラクターの思惑がきちんと消化され、今後の展望も気になってくる良い最終回だったと思います。
鹿矛囲と東金の対峙は、なんと朱ちゃんが東金を組み伏せるという超展開で回避(笑)
朱ちゃん強すぎですよ…((((;゚Д゚)))))))
それとも東金が弱すぎるのか…。
2話くらいで、ジムで汗を流す東金が狡噛を彷彿させるほどだったんですけど、あれはなんだったのか…?(笑)
まあ、東金の人物像を最後に掘り下げるために、彼が身動き取れなくなる展開を挟む必要があったのでしょうね。
で、その東金の過去。まあ、前々回あたりでも断片的に描かれましたが今回はより深く。
人工的な免罪体質者として生まれ育てられた東金朔夜。
動物を無惨に殺しても犯罪係数はピクリとも上がらない少年が、唯一依存していたのは母親・東金美沙子。
シビュラに迎え入れられたという母親を独占しようとして凶行に及び、結果として傷を負った母親の脳がシビュラの一部となるのが皮肉というかなんというか。
おそらく、本来免罪体質者であるはずの東金の数値が上昇するきっかけとなったのはこの出来事なんでしょうね。
その後、執行官として母親(シビュラ)と再会。
この時には犯罪係数は潜在犯認定されるだけの数値が測定されていたことが分かります。
彼がどれほど母親に依存していたか(平たく言えばマザコンの度合い)が分かるのが、手錠をかけられた腕を失ってでも母親を守ろうとしたこと。
最後は小者な感じが少ししましたが、母親(禾生)の死との直面、鹿矛囲との相討ち、そして史上最高の犯罪係数899を弾き出して死亡…という、悪役としてやりきった感はある最後でした。
(もしかして、700~800台の犯罪係数を300以下に抑えておけるという意味での免罪体質だったのかな…)
東金を置いて先へと進んだ朱と鹿矛囲は、ノナタワー地下に隠されたシビュラシステム本体へとたどり着きます。
地下鉄と繋がってたんですね。よくそんな抜け道を朱ちゃんが知ってたよな…。
途中、禾生が立ち塞がりますが、犯罪係数がリーサル判定を出したため鹿矛囲によって執行。
これはシビュラの、トカゲの尻尾切りということなんでしょうね。
鹿矛囲の肌の下の組織が一瞬見えたのは、多体移植であることを表現したかったのかな。
ついにシビュラにドミネーターを向けた鹿矛囲。
ここで前回、朱がシビュラに提案したことの解答が出ます。
集合体としての鹿矛囲を裁くには、シビュラが集団的サイコパスの計測を認めなければならない。
しかし、それはシビュラ自体も裁きの対象に引きずり下ろされることを意味している…。
シビュラの全能性は失われ、完璧さによって保証されていたシステムの正当性が疑われてしまう…。
この全能者のパラドクスを朱ちゃんなりの解釈で解決するのが、今回シビュラが選んだ方法。
集団的サイコパスを認めシビュラ自体も裁きの対象となった上で、犯罪係数を上昇させる要因となる脳ユニットを排除し、システム全体の正当性を失わずに存在し続ける…。
全能者は常に全能である必要はない…。
まあ個人的にはシビュラさっさと潰して欲しい気持ちもあるんですが、それは秩序(≒平和)を重んじる朱ちゃんの望むところではないし、このロジックのぶつけ合いがPSYCHO-PASSの面白いところなのかもしれません。
今回、犯罪係数が高めな脳が処分されたことで、シビュラも少しは清い心を持つように…なるわけねえな(笑)
鹿矛囲という人間については、ちょっと最後まで人間性が掴めませんでした。
ていうか、最終回になって初めて多重人格ぶりが描写されるって…(笑)
自身の命への執着がそれほどないのは、複数の脳から作られた人格ゆえかな…となんとなく思いました。
鹿矛囲を形成している185人は鹿矛囲以外は一度死んでいるわけだし。
いつか本当にシビュラを裁く者のために、自分の命と引き換えに集団的サイコパスを認めさせるという目的だったことは分かりました。
ただ、秘匿されていたシビュラ本体について鹿矛囲が知っていたのは何故だろうとか(シビュラが集合体であることを知らなければ、鹿矛囲という集合体の犯行はカウンターにならない)、明らかに色相が濁ってそうな禾生に「お前は何色だ?」とかってちょっとよく分からない面もある人で…(笑)
「散れ、漆黒」とか中二病がちょっと入ってましたね。
鹿矛囲は、1期の槙島を彷彿とさせるカリスマ性を持ってるようでいて、けっこう掴み所がなかったですね。
東金の方が、最後はゲスな悪役としてはっきり活躍していて、分かりやすかったかもしれません。
あと、忘れちゃいけないのが霜月ですよね。
正直、この人が一番意外な人物だったかもしれません。
シビュラの秘密を知って、それを受け入れた人っていないんですよね。
朱ちゃんはもちろん、カガリも、チェ・グソンも。
色相の清濁に関わらず、シビュラを知れば誰もが「これはヤバい…!」と思う。(東金の場合はマザコンが勝ったということで…)
でも霜月は、それを受け入れてしまった。
これはヤバいと感じながらも、自分のサイコパスを濁らせないようにそれを正しいことだと思い込もうとする、忘れようとさえする。
たぶん、朱ちゃんのように嫌悪感を抱いてそれを変えようと模索するのが最も正しい反応で、霜月が示した反応は大衆心理の暗い側面を表しているんじゃないかと。
いわゆる、事なかれ主義というやつですね。臭いものには蓋をしろ。
現実の話でも、国民は政治にいろいろな不満を持っているはず。
例えば消費税上がって嬉しい人はいないし、集団的自衛権だって喜ばしい話ではない。
でも、反対の意志を示して行動する人はとても少ないんですよね。
この前の選挙で自民党が結局一人勝ちしたことからも、人は変化よりも安定を求めるということが言えると思うんです。
安定のためなら、少しの不満は我慢して受け入れてしまう。
それが間違った選択だったとしても、それで得られる安定の方がウエイトが大きいんですよね。
だから、今回の彼女の叫びはある意味とても怖い内容なんですよね。
現実を盲目に(盲目なふりをして)生きる私たちの愚かさ醜さが、霜月に集約されてるんですよ。
だから、ネットで人気ないのか霜月は。同族嫌悪なんだ。
とりあえずこの残酷なアニメを1クール生き残った彼女ですが、今後サイコパスは濁っていくのかそのままなのか…。
朱とシビュラの対立の進行によってモロに影響を受けそうな人物でもあり…。
劇場版に少なくとも登場はするようなので、影ながら応援していきたいと思います。
あと、強襲型ドミネーターで青柳を執行してしまった須郷が、酒々井を止めることには成功したり、東金に朱に依存していると指摘された雑賀教授が、依存カッコ悪い、と言って元の場所に戻ったり、細かい伏線の回収もあって、地味に良かった最終回だと思います。
まだまだ語りたいこともあるので、劇場版を観る前に2期のまとめ的なものを書くかもしれません。